国語辞典や類語辞典を買いまくってもプロ翻訳者の語彙の豊富さにはかなわない

私が「英文翻訳術」という本で学んだ最大の成果はプロと素人翻訳者の翻訳の時の頭の働かせ方の違いと、プロの頭の中にある翻訳語彙の豊富さと自分とのギャップでした。

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国語辞典や類語辞典を買いまくってもプロ翻訳者の語彙の豊富さにはかなわない

現在、安西徹夫先生が書かれた「英文翻訳術」に取り組んでいます。安西先生が本のなかで取り上げている例文は全部一度は自分で訳してみて、プロ翻訳者の訳と見比べながら進めています。まだ終わっていませんが、ほぼ一ヶ月この本に取り組んでみて気付いたことがあります。プロ翻訳者の語彙の豊富さにはとても敵わないということです。英文にももちろん分からない単語は沢山ありますが、それ以上にこういう事を日本語でなんて言うんだっけという事が多々あります。もちろん英和辞書を引けば単語の訳は書いてあります。でも、こういう状況では日本語にその訳を直接当てはめては機械翻訳のようで不自然かもしれないという場合があるのです。例えば以下の例があります。


Every allowance was made for unseen circumstances.


試訳)引当金はすべて、今まで見たことがない状況のために用意されている。

訳例)不足の事態に備えて、あらゆる考慮がはらわれた。

訳を書いている時は訳例を隠しておいて、訳例を見て気づくのです。「今までみたことがない状況」のことを「不足の事態」と日本語では言うのだったと。この本に取り組み始めてから、同じくプロ翻訳者の高橋先生がブログで薦められているので、今日までに国語小辞典を3冊と「日本語大シソーラス」と「てにをは辞典」を買い揃えてしまいました。それでも、ぴったりの日本語が見つからない時は沢山あります。高い出費(何とか貯金くずして払わないと 汗)でしたが、これが辞書では補えないプロと素人の差なんだと痛感した次第です。

 私がこの本から学んだ最大のことは翻訳とは「英語」を「日本語」に文法的に間違いなく訳するだけでは足りなくて、英語をいかに自然な日本語に訳すかが翻訳だということです。安西先生はこの本の中にそのテクニックを文法別に分けて読みやすく書かれています。そういう意味でこの本は翻訳の基本を実体験を通して学べる本ではないかと思います。翻訳を実際に仕事にしている人達にとっては当たり前のようなことが書いてあるのかもしれませんが、私には毎日が新しい経験で勉強になることばかりです。あと数週間の付き合いになるかと思いますがしっかり学ばせてもらおうと思っています。

ところで、国語辞書はなぜ語句の説明文を検索出来るようになっていないんでしょうかね。現在のパソコンの性能を考えると全文検索をかけるなんて容易いことだと思うのですが、そういう機能がある辞書は聞いたことがありません。こういうことを日本語で言いたいんだけど、それ何て言うんだっけと思った時に誰もが役立つ機能だと思うので、是非デジタル辞書を販売している方々に頑張ってもらいたいです。

そしてこれだけでは私の感想だけで終わってしまうので、今日3冊の辞典を揃えてみて発見したテクニックというほどではありませんが、意外な効用をここで紹介したいと思います。

用例に自分の使いたい言葉を入れて用例検索をすると、見事に「てにをは」辞典のように、その言葉を使い方がずらっと並ぶということです。もちろん紙の専門辞書にはかないませんが、翻訳者というのは一日1500字ほど訳さないと食べていけない職業ですので、このようなちょっとしたテクニックで時間を節約するのもありだなと思った次第であります。